五島うどんの作り手「太田製麺所」さんを訪ねた。五島列島は大きく二つに分かれている。中通島をはじめとする上五島と福江島をはじめとする下五島。「五島うどん」の製麺所が多くあるのは上五島に位置する中通島だ。
五島にはうどんをはじめ、豊かな自然からうまれた特産物がたくさんあるのに、物流の問題で島から外にでるハードルが高い現状がある。全国にあるうどんの中でも「五島うどん」が “幻のうどん” と言われるのは、陸続きの産地に比べて流通しにくい。そんな背景もあるそう。
「太田製麺所」さんは島で100年つづく製麺所。2本の棒に麺を8字状に掛けていき少しずつ何度も引き伸ばしていく手延べうどん。手延べ製法では、伸ばし作業の際に麺がくっつかないよう「でんぷん粉」などを使用するのが一般的だが、五島うどんは粉ではなく椿油を使う。
だから茹でるときにお湯が白くドロドロにならない。椿油を麺に塗ることで延びにくく、なおかつコシが強い麺ができあがるのだ。
“うまいうどん”の食べかた
そして五島うどんの最大の特徴はその食べかた。五島では「地獄炊き」と言って、大きな鍋に湯を沸かし家族や友人と鍋を囲んで、茹でたてのうどんを温かいあご出汁、もしくは生卵と醤油。それに鰹節やネギなどの薬味を入れてシンプルにいただく。
それができるのも延びにくく、コシが強い五島うどんだからこそ。なにより茹でたてのうどんは格別においしい。
7~8分の価値
最近では、茹で時間が短く簡単に食べられるうどんが流通しているため、そちらが主流に。一方乾麺は7~8分の茹で時間がかかるため、忙しい世代の人たちには敬遠されがちなのだとか。けれども「その7~8分に価値がある」と太田さんは言います。
大きな鍋を家族で囲み、茹であがるまでの時間に会話がうまれ、和気あいあいと穏やかな時間が流れる「会話をうんで、団らんをつくる食卓」それが五島うどんの文化。「うまい うどん」と「大きな鍋」が人をつなぐ、その文化が絶えることなく広がっていくように、五島へ来た人たちへも家族のようにうどんを囲みもてなしてくれるのです。
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