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love letter from K. Season6「旅」 Soul Eating ー 博多/後編 ー

ストア:KOZLIFE掲載日:2022/05/27
コンセプター・和田健司さんによるエッセイ「love letter from K.」。
KOZでのお買い物がもっと楽しくなるヒントをお届けします。

Soul Eating ー 博多/後編 ー

去る3月、数年ぶりの出張で福岡県を訪れました。せっかくここまで来たのだから、ということで出張終わりにホテルTHE BASICS FUKUOKAにてゆっくりともう一泊リモートワークをすることに。というのが前回のお話。旅というものは予定を詰め込むものではなく、少なくとも1日はホテルでゆっくりする日を設けるべきだなと痛感。そして明けた土曜日、博多は快晴、気温も20℃と気持ちの良い天気。しっかり充電したので「よし美味いもんでも食べよう」と街に繰り出すのでした。

天ぷらより塩辛

もつ鍋、明太子など博多グルメは数々食べてきましたし、今となっては東京でも食べられる。となれば向かうはローカルフードのみ。地下鉄を乗り継ぎ、天神方面へ。駅から少し歩いた所に行列を作っているのが「天麩羅処 ひらお」。大衆的なお店ながらも、揚げたての天ぷらをひとつづつコースのように出してくれる博多民のソウルフードだそうです。さっくさくの天ぷらはもちろん有名なのですが、ここの名物は席に着いてから最初に出てくる「塩辛」。最初は天ぷらに塩辛!?と不思議に思いましたが、口に入れてみると全く違う味に驚きました。
いわゆる、僕らが知っている肝で和えてある塩辛ではなく、新鮮なイカの切り身のみを塩と柚子で浅めに漬けられた一品。柚子の香りが鼻をふわっと通り抜け、みずみずしいイカは甘みが強くて、とても爽やかなんです。ご飯との相性は文句なし。天ぷらが出来上がる前にご飯1膳平らげてしまう方もいるでしょうね。そしてこの塩辛、なんとおかわり自由、通称「エンドレス塩辛」らしいのです。天ぷらも熱々でとっても美味しかったのですが、塩辛のインパクトが凄すぎて、気づいたら冷凍のお持ち帰り用を購入していました。どうやらオンラインでも購入できるそうなので、気になる方は是非アクセスしてみてください。

街ブラから二軒目

天ぷらでお腹一杯にすることもできたのですが、これだけで終わりというのも勿体ない。腹半分位にしておいて、もう一軒行ったらいいんじゃないか…?と悪知恵が働きました。ちょっと街を散歩しながら、歩いて次のお店に行くことに。
夜の街で知られている博多。土曜の昼ともなれば人通りはまばらで、和やかな雰囲気に包まれています。道を歩いていて気づくのは、空き物件の多さ。通りの両側が閉店しているなんて景色もしばしば。街もどことなく元気がないように見えます。これだけグルメの観光地として有名ですから、打撃も相当なものでしょうね。以前の活気溢れる博多の街に早く戻ってくれる事を願うばかりです。しばらく歩き続け、少年達が草野球で賑わう公園の向かいにその店はありました。

「やきとり屋台 やまちゃん」昔懐かしい屋台の雰囲気を今に引き継ぐ博多のラーメン居酒屋さんです。

いらっしゃい

店に一歩足を踏み入れば、昼間から多くのお客さんで賑わっており、そこはまるで屋台。席に着くやいなや店員さんが「お兄さん、何飲みます~?」と威勢良く聞いてきます。“飲む事が前提なんだ…”と呆気にとられているわけにはいきませんので「じゃあ、芋焼酎水割りで」とオーダー。
グラスになみなみとつがれた無色透明な液体を一口→ほとんどロックの濃さ(笑)。これも屋台の洗礼か、と壁のメニューに目を向ければ、あぁ胡麻かんぱち…さざえつぼ焼きなんてあるんだ、と誘惑の応酬。でも、自分の腹5分目だったのを思い出し多分ここで何か食べたらゴールまで到達できそうにない。そう、ゴールとは「博多ラーメンで飲む」。これが僕が設定した本日の偉業なのであります。もうお腹一杯ですごめんなさい~みたいな状態で無理矢理ラーメンを食べるなんて、全博多民に失礼極まりない。ということでここはラーメン一択で。
ラーメンをつまみに焼酎を嗜む。糸のように細いストレートな麺は噛めば、硬めでブリっとしたアルデンテのような食感。そこに臭みの全くないサラっとした豚骨スープが絡みます。ズズっとすすれば旨味が口いっぱいに広がり、そして、それを締めるように焼酎を飲む。これぞ博多の真骨頂、参りました。そして周りを見れば、ほとんどの人が飲んでいる事に気がつきます。スポーツの試合帰りっぽい女性チームも買い物途中の男性2人組も、ラーメンをすすり、お酒と会話を楽しんでいます。

半ランチセット

そんな店の中で、店員さんと何か熱く語り合っている常連のおじさま達が。 「今日ランチセット終わってしまったから、ラーメンに何か好きなメニュー半分で作ったるわ。何がよか?」「そんなんキムチチャーハンに決まっとるやろ。」「いや、半カレーやって。」「いや、そこはホルモン焼きやろ。炭水化物・炭水化物にしてどうするん!?」「はよ決めい(店員)」中年を過ぎた大人が、ああでもないこうでもないと少年のように永遠と語っているのです。とそこへ別の常連さんが「おはよう。」と店へやってきて、その話題に油を注ぎます。「ラーメンに何付けたら最高のランチセットやろか?」「そやなぁ、半ラーメンに半麻婆豆腐で、半ライス別でもらったらええやん。」「どんだけ、半つくねん!!」(一同笑)
地元の人達から聞こえてくる笑い声。その光景を見ながら、60歳を過ぎても変わらない仲間と変わらない場所で、どうでも良い事を笑顔で話していられるこのおじさま達が、ものすごく幸せそうに感じました。「いいなぁ」と素直に羨ましかったのです。この人達は、もしかしたら刺激的ではないかもしれないけれど、間違いなくここに帰る場所がある。気の置けない仲間に囲まれて、変わることのない時間を過ごすことができている。僕にはそういう場所はない。

これからの人生で見つけられたら、いいなぁ。
その時は、半ラーメンにしよう。

つづく
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