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【Or SPECIAL INTERVIEW】ブランドディレクターに聞く。Or(オア)への想い

ストア:Crouka掲載日:2022/10/29
CROUKA がゼロから作り出すブランド「Or / オア」。
今回は「Or」ブランド立ち上げの中心人物であり、CROUKAのチーフバイヤーでもある 柁原 優詔にインタビュー。ブランドを立ち上げるに至った経緯やコンセプト、こだわりなどを伺いました。

Photo:Megumi Tanaka
Text:Yohei Nishikawa
柁原 優詔 / Masanori Kajiwara
CROUKAのチーフバイヤー兼Orブランドディレクター。某アパレル企業でのバイヤー経験を経て、2012年、地元福知山のCROUKAに入社。ショップスタッフからキャリアをスタートし、2013年CROUKAのバイヤーに就任。今後は商品の仕入れはもちろん、ブランドディレクションにも力を入れていく。

― 「Or」を立ち上げた経緯を教えてください。

まず、自分が着たいと思うもの、そして着て欲しいと思えるもの。そんな服を作りたいというのがスタートです。
オリジナル商品は、原価率を抑えて、ある程度のプライスを付けて利幅を取るみたいな傾向があるんですが、Orはそれをしていません。
ただ、ラインナップを見てもらうと分かるんですが、正直、気軽に買える価格設定ではないですよね。
― たしかに、割といいお値段するなと。
コンセプトに繋がる話になりますが、このブランドで作る場合の必須項目を自分の中で掲げていて、それをクリアしないと作る意味が無いと考えています。その項目をクリアする為にはある一定レベル以上の素材や原料が必要になり、それと同様にある一定レベル以上の作り手が必要になります。
ということはどういうことか?ストレートに言うと、Orの製品は原価率が「高い」のです。
― なるほど。だからこのお値段なんですね。
ブランド品や価格が高い商品にはそれぞれに明確な理由がありますが、生産コスト以上に利幅を取っているブランドも少なくありません。
ブランド品を所持することによる高揚感への対価という考えにも共感できますが、Orは製品そのものへの正しい値段設定、「適正価格」を強く意識しています。
手に取っていただき、着用し続けていただくことで、製品そのものへの「価値」を実感してもらえる。そのような洋服を作っていこうと考えています。
丁寧な仕上がりを見てみると、日本国内の工場で、熟練の職人による確かな技術によって作られているのが分かる。
丁寧な仕上がりを見てみると、日本国内の工場で、熟練の職人による確かな技術によって作られているのが分かる。

― 「Or」のデザインコンセプトについて教えてください。

気合を入れて着る服というよりも、日常着を作りたかったんです。迷うことなく手に取りやすい、どんなものにも馴染むような服。
そして、具体的には大きく分けると3つの項目を強く意識しています。
・時代に左右されず、「長く着たい」と思えるものか。
・長く着る事が出来る「耐久性」は備わっているか。
・自宅で気軽に「洗濯」ができるか。
長く着ている服ってシンプルなものが多くないですか?時代は関係ないというか、いつ着ても自分に馴染むみたいな。
― トレンド関係なく、なんにでも合わせられるというか。いわゆる永久定番と呼ばれるモノってその究極ですよね。
そう。なので、デザインの大前提に「シンプル、華美じゃないもの、普通なものをつくる」というのはあります。
あと、とても気に入って愛用していたけど、ボロボロになって着なくなったというケースありませんか?
自分はこの経験が凄くあって。奮発して高い買い物をして、長く着たいと思っていたけど、数か月でピリングや毛羽立ちが起きてしまい気軽に着れなくなってしまったっていう。
確かに、デザインもいい、生地の雰囲気もいい、ブランドも安心感と高揚感を与えてくれる。でも、長く着れないなんて・・・なんだかせつないですよね?
― わかります。せっかく長く着たいと思える洋服に出会えたと思ったのに・・・ってテンション下がってしまいます。
だからこそOrの洋服は「耐久性」を必須項目の1つにしています。
そして最後に「自宅で洗える」というのは非常に重要で、気軽に洗えない洋服は、気を遣って着ないといけないし、着用頻度も下がりますよね。
お気に入りの洋服だからこそ、たくさん着たいし、長く着たい。その為には自宅で簡単にケア出来るという部分は外せないと考えています。
手洗いを推奨してはいるが、洗濯機の手洗いモードでも洗うことができる。
手洗いを推奨してはいるが、洗濯機の手洗いモードでも洗うことができる。

― 次に、素材選びのこだわりを教えてください。

イージーケア、劣化しにくい、色目が綺麗かどうかです。
今回で言うと、生地サンプルを見ている中で特に惹かれた「キャッシュウール」という糸を使用しているのですが、文字通りカシミヤのような風合いなのに洗える糸なんです。
― キャッシュウールの「Cash」は「Cashmere(カシミヤ)」から来てるんですね。
カシミヤ糸には憧れがあるけど、ケアがしにくいのが難点なので、タッチはカシミヤなのに洗えるというのはとても理想的でした。
タッチに関しては個人差があると思いますが、自分自身、ウールのチクチク感やケアのしにくさが苦手で避けていたんです。タートルネックだと肌が荒れるし、チクチクしないと言われる製品を着てもチクチクを感じ取ってしまうくらい敏感で・・・
ただ、この糸に関しては別格でした。チクチクしないし、スウェットを着ている感覚ですかね。
― それすごいわかります。僕も初めて袖を通した時に「スウェットみたい!」って何度も言ってました(笑)
神経質な自分でも着れるなら大多数の人に心地よく着ていただけるだろうと思いました。
で、この糸を使う決定打になった話があるんですが、3年間自宅での洗濯を繰り返し、着倒したっていう編地のサンプルがいくつかあったんです。
それが、ほぼ毛羽立ちもなく、重大なピリングも起きていない。自身のワンシーズン着た、似ている編地のニットと比較するとその差は歴然。
糸でこんな変わるんだ・・・と、かなりの衝撃を受けました。
現時点でも糸の価格がどんどん高騰しているので、今回このタイミングでリリース出来たのは本当に良かったと思っています。
イタリアが世界に誇る名門紡績会社「ゼニアバルファ社」が手掛けるキャッシュウールは毛羽が少なくカシミアのような風合い。
イタリアが世界に誇る名門紡績会社「ゼニアバルファ社」が手掛けるキャッシュウールは毛羽が少なくカシミアのような風合い。

― 素材の他にもこだわった部分があるそうですが?

「着心地」を追求するにあたり、ネック後ろにつけるネームタグにもこだわりました。
ブランドロゴの刺繍をより細かく仕上げてもらう事で、見た目の高級感が出るだけでなく、肌当たりも良くなります。コストこそかかりますが、少しでも心地よく着用していただけるよう細やかな部分にも気を遣うことで、ずっと着たいなと思う洋服になるのだと思います。

― カラーの選定理由を教えてください。

ベーシックなカラーを軸に、着用した時になんとなく雰囲気が出るような色目を選定しています。
トレンド感はあまり意識していないですが、少し見栄えする色目も意識して差しました。
また、糸の段階と生地になってからでは色の雰囲気が変わるので、時間をかけてじっくり選ぶようにしています。
キャッシュウールは、ウールなのに発色が良いというのも特徴のひとつ。
キャッシュウールは、ウールなのに発色が良いというのも特徴のひとつ。

― 工場選びや製造工程について教えてください。

工場によって出来る、出来ない、得意、不得意があるので、出来るを前提に得意な所に依頼をしています。
「こんな編地誰も作りたがらないよ。」と言われながら「この編地じゃなきゃダメなんです。」と無理なお願いをする事も。
― 職人泣かせの編地なんですね。
そうなんです。細かなサイズ調整など、工場の方と相談しながら作り上げています。

― 実際に愛用されているということですが、着心地はどうですか?

手前味噌になりますが、着心地はとても良いです。特にプルオーバーは、ニットとスウェットの間をイメージして作ったので、理想的な着心地です。
糸もかなりたくさん使用しているので、間違いなく温かいです。冬場、ロンTとニットで軽やかに過ごすイメージをするだけでとてもワクワクしますね。
めんどくさがりなので洗濯機で洗っていますが、綺麗な状態です。
オンシーズンになるのでヘビーに着て、状態を確認しつつ次への企画にも反映したいですね。

― 最後に今後の「Or」の予定について教えてください。

現状ではニット製品のみの展開ですが、布帛の企画も進めています。
決して華美なものではないですが、気づいたら手に取ってしまうような製品を今後も企画していきたいと思っています。

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