「Khadi(カディ)はただの布ではない。思想である。」
マハトマ・ガンディーが残した言葉です。
手で糸を紡ぎ、一枚の布を織り上げる。多くの手仕事のなかでも、特別な光を放つカディ。
sisamにとって、カディの服を作ることは長年の夢でした。
sisamで初めての挑戦
sisamがカディの服づくりにとりかかったのは2019年。
インドのフェアトレードNGO「Creative Handicrafts」と共にはじまったものづくりです。
シンプルにものごとが進むと思っていた私たちの考えが甘かったことに、数か月後気づきます。
カディの生地を探すことが、簡単ではないのです。インドの業者に発注していた生地が、実は手紡ぎではなかったというトラブルや、コロナウイルスの流行拡大など、その道のりは想像以上に長いものでした。
それでも、カディの服づくりをあきらめたくはないと、デザイナーたちは頭をひねる日々。
「Creative Handicrafts」だけにとどまらず、私たち自身が直接つながっている人々と、生地づくりの行程から一緒に形にしていくことはできないだろうか。
そこで声をかけたのが、同じインドで手織りのショールを作ってくれているフェアトレードNGO「SASHA」でした。sisamで初めて二つの団体の生産者をつなぎ、チームとなって一つのものづくりを始めたのです。
ムルシダバードという街で手紡ぎされた糸を、丁寧に生地へと形にしていく「SASHA」の生産者の技術と根気はさすがです。
ただでさえ時間と技術の要する織り仕事。
切れやすく凹凸のある手紡ぎ糸を扱うには、さらに繊細で途方に暮れるような行程が必要でした。
ようやくできた生地を服に仕立てていくのは、「Creative Handicrafts」の生産者たち。
彼女たちもまた今回の薄くて繊細な生地に、悩まされます。
小さな小さなミラーワークの刺繍は、一つ縫い付けるのに30分もかかったそう。
いつも以上に、丁寧に丁寧に。
ビデオ通話で「ほんと大変だったわよ~!」と話してくれた生産者のカラリとした笑顔に頼もしさと、深い感謝を感じました。
いま、インドでは手紡ぎの仕事が途絶えつつあります。
それは、かけた労力と時間の割に、お金にならないからといいます。
思想と商業が混ざり合い、カディもまた時代とともに変化していくのですね。
育てた綿花から、チャルカで糸を紡ぎ、自らの身体をつかって織り上げる。
その営みが、昔話として語られる未来がくるのかもしれません。
何かを未来へつないでいくために、今を生きる私たちができること。
それは「出会う」ことからはじまります。
今、この時代にカディというものが在るということを、sisamはものづくりを通して伝えていきたいです。
カディをまとうことの心地よさ。美しさ。
そしてもっと特別な何か。肌を通して自分のなかに染み込んでくる何か。
カディという、唯一無二の手仕事に。
カディという、過去がつないできたメッセージに。
どうか出会っていただけますように。
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キナリノマガジン7月号でも取り上げていただきました
ストア紹介
sisam FAIR TRADE
「フェアトレードのある暮らし」
インドやネパールで、人の手のぬくもりを宿しながら丁寧に作られた衣服。
フィリピン山岳地帯で森林農法により育てられたコーヒー。
ものの背景とつながることで、日々...もっと見る