記事を書くにあたって『シュランケンカーフ（ドイツシュリンク） 』との出会いを思い出しています。

20数年前、パリの有名メゾンで見た上品で威厳さのあるバッグ。

当時バッグデザイナーとして国産革を使う事が多かった僕には、なかなか使う事が出来ない値段の革で、いつかは使ってみたい革のひとつでした。

当時、台東区の輸入革を扱う問屋さんに行くとその革はありました。

革が保管されているフロアに通されると輸入革特有の匂いがしたのを憶えています。

『その革たちの匂い＝高級品』それが僕にインプットされた記憶です。

匂いの記憶は残るようで丁寧に鞣された革の匂いを嗅ぐと今でも思い出します。

見せて頂いたのは、ペリンガー社のシュランケンカーフや今はなきドイツの名タンナー、 カールフロイデンベルグ社のドイツシュリンク。

パリの有名メゾンが先に選別して落とされたものが日本や他の国に送られているとか…。

そこはバッグを作る際、パーツを裁断する時も、革の目やシボを見て良い場所だけしか使わないとか…。

そんな話を聞いて、僕らの中ではその革が伝説になっていた記憶があります。



そんな憧れの革。

いつかは使ってみたいと思っていたクローム革の最高峰。

STANDARD SUPPLYで大人が持てる上品な革小物を作ろうとなった時に是非その革を使おうと頭に浮かびました。

先ずは思い入れのある革シュランケンカーフ の説明です。

この革のタンナー、ペリンガー(LUDWIG PERLINGER Gmbh)社は1864年創業のドイツの老舗タンナーです。

カーフ （生後６ヶ月以内の子牛）のクローム鞣しを得意とするタンナーで、今から60年ほど前に開発された革は、世界のトップメゾンにも愛され、ペリンガー社を代表する革になりました。

熱を加えたり型押しをせずに収斂性の強い鞣し剤によって革の表面に自然なシボを持たせた独特な表情と張りが特徴です。

自然なシボなので１枚の革でも部位によってシボが大小あったり深かったりと様々な表情が出ます。

また柔軟性があるので使い込んでも型崩れしにくく色落ちや退色も起こりにくいという特徴があります。

実際に私もこの革を使ったお財布を1年以上使っているのですが、メンテナンスをほぼしなくても型崩れも無く、キレイな状態を保っています。

この革は、使い込んでこそ特性が見え本当の良さが分かると思っています。

またペリンガー社は飼育管理された指定牧場のアルペン牛原皮を使い、多額の費用をかけて排水処理施設の完備や ゴミ焼却施設を完備して環境への配慮も徹底している環境先進国ドイツらしいタンナーです。

そんな憧れでもあり思い入れのある革を使って今回STANDARD SUPPLYのハイエンドラインの革小物を作ってみました。

内装革にはインド産のカーフ（生後６ヶ月以内の子牛）。

ピット槽に漬け込んで時間をかけて鞣したベジタブルタンニン鞣しのカーフを使います。

カーフらしいきめ細かな肌面とサラッとした肌触りが特徴です。

またセミアニリン仕上げなので使い込むほどにツヤが出て来ます。

表革のシュランケンカーフの色に合わせ全色色合わせをしました。

この革を生産しているインドのタンナーは、レザーワーキンググループ（LWG）と言う世界の皮革製造工場に持続可能で適切な環境ビジネスを実行させる組織が認定する、ゴールドレイトを取得している環境にも配慮している会社です。

メインファスナーはYKKの高級ファスナーエクセラ。

コインポケット部分のファスナーには僕のこだわり、スイスriri（リリー）社のものを使っています。

ファーストラインナップは４型。

絶妙なサイズ感の長財布『ROUND ZIP LONG WALLET』とコンパクトサイズの『ROUND ZIP COMPACT WALLET』、マチ付きなので口開きが良い『L ZIP PURSE』のお財布３型。

もうひと型は取り外し式のキーパーツが付いたカードサイズのキーケース『CARD & KEYCASE』。

色展開はベーシックカラーで『BLACK（ブラック）』『TAUPE（トープ）』 『SAXE BLUE（サックスブルー）』の３色。

店舗オンライン限定で『ORAGE（オレンジ）』と『YELLOW(イエロー)』の２色。 合計５色が揃います。



コロナ禍のソーシャルディスタンスの呼びかけでお店の支払いもキャッシュレスが増え、お財布の型動向も急激に変わっている気がします。

従来のお財布を中心とした型展開から、これからはスマートフォンを中心とした型展開になってくるのでしょうか？

今後は世の中の動きも見据えながら革小物のデザインを思案したいと思います。

シンプルでユニセックスなデザインですが素材が魅せるカジュアルで上品さも併せ持った革小物。

長年使ってその良さが分かる革小物です。 ぜひこのクロームレザーの最高峰を味わってみて下さい。