動物と暮らしている人や、なにかと丁寧に向き合いたい人に
この本のあとがきにこんな一節があります。
「ウマは不思議な生き物です。世の中には、どういうわけか「ウマ」という言葉を聞くだけで、ぱっと顔が輝いたり、にこにこしたり、気持ちがすうっとする、という人が存在しているようです。それはもう理由なんてなくて魂がそういう風に反応する、としかいいようのない感じ。かくいうわたしもそのひとりです。」
日本最西端の島、与那国島で馬のカディと暮らす著者、河田桟さん。東京で編集者として働いていた河田さんは、あるとき、みなしごの与那国馬カディと出会い、与那国島に移住して一緒に暮らすことを決めます。
馬に関して全くの初心者だった河田さんが、馬と接し始めたときにいちばん知りたかったことは、「馬はどんなふうにものごとを感じ、それをどう表現しているのだろう」ということだったそう。馬語の本を作ったのは、自らのそんな経験をもとに、これから馬と出会う誰かのヒントになることを願ってのこと。
「馬語??」と想像すると、「ヒヒーン」とか「ブルルルッ」のような音が思い浮かびますが、馬の会話の中心は、体を使ったボディランゲージなのだとか。耳やしっぽ、体全体を動かして、仲間同士でいろいろな会話をしているのだそうです。「耳が少し開いている時はくつろいでいるとき。しっぽを高く掲げているときは、わあいと気分が高揚しているとき。」そんなふうに、体の部分のしぐさから見て取れる言葉は単語のようなもので、それ以外の「間合い、立ち位置、テンポ」などがすべて合わさってひとつの言葉になっているそう。
あとがきには、河田さんが生きものに向き合う姿勢をあらわしている一節も。
「これはウマに限りませんが、生きものに関わろうとするとき、いちばん大切なのは、その存在に対する「敬意」ではないかとわたしは思っています。」
馬であれ人であれ、その存在が体全体で発している言葉をちゃんと受け止めることができたら。河田さんが馬の気持ちを知りたくて、優しい目で観察していることが本のすみずみまで満ちていて、自分もそんなふうに、自分以外の生きものと向き合えたらいいなと思えてきます。
手作業でつけられているという優しい手触りの紙のカバーも、手に取るたびに温かくて、嬉しい気持ちに。馬のイラストは河田さんが描かれていますが、それが本当に可愛らしくて、何度見ても思わずにっこりしてしまいます。
巻末には、馬語をもっと知りたいときに役立つ本や、おすすめの牧場の紹介も。 馬のことがなんだか気になるかたはもちろん、動物と暮らしているかたや、なにかと丁寧に向き合いたいかたにもおすすめ。自分以外の生きものと対話するヒントが詰まった1冊です。
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