木皿や拭き漆の器をお使いくださっているお客様から、「金属のカトラリーでは、拭き漆の器や木の器に傷がついてしまうので、木のカトラリーが欲しい」というご要望を受けたのがきっかけでした。素材は検討を
重ねて竹に決め、何度も試行錯誤を繰り返して、竹のカトラリーシリーズをつくりました。

金属のカトラリーは、西洋料理のように磁器とセットで使われたり、韓国のように器も金属のものに使われる場面で長く親しまれてきました。今の日本の食卓では、陶磁器をはじめ、木、ガラスの器など、色々な素材の食器が使われます。形もプレートばかりではなく、お椀やボウルのような器と思いますので、金属のカトラリーでは使いにくいことも多いです。

一方で、木のスプーンやフォークはたくさんありますが、素材の特性上、厚ぼったかったり重いものが多く、「木の素材を楽しむ」という気持ちを優先して使うものが多いように感じていました。

普段使い慣れているステンレス製のカトラリーに近い薄い形で、口当たりの柔らかな素材で作りたい。 そう考え、素材は竹に決めました。竹は、木よりもしなやかな強さを持ち、繊維の方向に沿って非常に細く割ることができます。茶道具を主に手がける京都の高野竹工に製作を依頼し、試作を積み重ね、出来る限り薄い造りにしました。高野竹工が京都府長岡京市で、自社で管理する京都の竹林の竹を乾燥・製材して作っています。

スプーンの面の形は、特に検討と試作を重ねました。薄くして口当たりを良くするためにも、厚みがでないように、面の深さは浅めにしています。ただ薄く浅くすると、作りやすいですが使いにくいです。浅くしたときの、口に入るときの動きや口当たりの良さを考え、スプーン面は楕円形ではなく、雫のような形に。また、先にかけて少し溜まりがあるような形にしました。こうすることで、スープのような液体も掬いやすくなっています。

加えて、柄も工夫しました。ほんの少しだけ曲げ加工をしています。真っ直ぐのままであれば加工もいらないのですが、実際に口に運ぶ際に、この曲げ加工をするかしないかで使いやすさが違ってきます。一見わからない程度ですが、柄の真ん中あたりから面にかけて、僅かに角度をつけています。

こうして木地（本体）が完成して、その後の塗り仕上げ。塗りなしですと、水や油への耐性も弱く、メンテナンスが大変になってしまいます。ウレタン塗装は折角の竹の感触もなくなってしまいますし、熱いものを掬うときに匂いも気になるもの。竹の加工と漆塗りの職人は全く別なので、価格は上がりますが（ウレタン塗装が多い理由の一つでもあります）、仕上げは拭き漆です。

これを作った時には、竹のカトラリーはウレタン仕上げのものが多く、漆仕上げのものはほとんどありませんでした。本塗りの小さめの匙のような種類はありましたが、お茶席で使うような高価なものに限られていました。

竹と漆という天然素材で、安心して使える、毎日でも使えるようなカトラリーという思いで作りました。

節を残した柄の表の部分は、竹の外皮にあたります。この部分は水分や漆をよく弾き、塗ってもほとんど色が乗らないため、竹の外皮そのものの色が残っています。竹の節は基本的に入りますが、節の位置は竹素材そのものですので、全て個体差があります。

色は「生漆（茶）」「黒漆」の２種類です。

「生漆（茶）」は、漆の木から採れた樹液の漆から、ゴミを取り除き精製した漆。いわゆる、「漆」の色といえます。塗る対象の木地にもよりますが、明るい茶系の色に仕上がります。

「黒漆」は、漆に松煙を混ぜて反応させ、黒色になった漆。顔料ではない、漆独特の黒です。

・食洗機のご使用、浸け置き洗いはお避けください。
・硬いブラシやスポンジで洗うことはお避けください。漆の塗膜が削れることがあります。
・洗剤は問題なくご使用いただけます。硬すぎないブラシやスポンジ等で洗ってください。
・長時間、直射日光に当てることはできるだけお避けください。変色や色褪せ、反りや割れが生じることがあります。

パソコンのモニター環境や携帯電話の機種・設定によって、商品の色味や素材感などが実物と異なって見える場合がございます。予めご了承くださいますようお願いいたします。