コンセプター・和田健司さんによるエッセイ「love letter from K.」。
KOZでのお買い物がもっと楽しくなるヒントをお届けします。
時間から自分へ
だんだんと夏っぽくなってきましたね。このエッセイでは、これまで「時間」というテーマで6回に渡り書いてきました。当初は自分の人生のスタイルを変えようというタイミングで、色々な事が起こりましたので少し時事的な雰囲気があるかもしれませんが、全て時系列立ててその時タイムリーに起こった出来事をリアルに書いていますので、是非過去記事も読んで頂けたら嬉しく思います。そして今回から新しいテーマ「自分」がスタート。この今まで経験したことのなかった時間の使い方を経て、僕が今気になっている「自分」というものの見つけ方・作り方。僕の興味の続く限り同じテーマで連載をしていこうと思っています。
個の時代
少し前から「これからは個の時代になる。」と耳にするようになりました。
身近な所では、フリーランスや個人事業主が今後は当たり前になってくるそうです。今までの企業に属していく生き方から、好きな事・本当にやりたい事をいくつか掛け持ちしながら生きていく。お金の重要性よりも、時間や自分らしさに重きを置いた人生の過ごし方。欧米では特に若い世代を中心にそのスピードはどんどん加速しているようです。おそらく近い将来、メインの職業だけで食べて行くのではなく、1人5職業位で生きていく人が一定数出てくるような気がしています。
個の時代か・・・と何となく漠然としたイメージはあるのですが、いざ明日からそうやって生きていけるか?と言われると困ってしまいますよね。自分らしさって一体何なんだろうと考えてしまいますし、やりたいこと全てに手を出す余裕はあまりないですし、時間のない方も大勢いる。実際の所、どうやったら自分らしさって培っていけるものなのでしょうね?
家に学校をつくる
3月、小学校が突然休校になりました。娘は公立の小学校、暫くは何もない状況が半月位続くことに。今まで全て学校に任せていた勉強を親が見なくてはいけなくなりました。ちゃんと育てていたつもりでも、朝から晩までを親が責任を持って全てをガイドしたことはなかった事に、ここで気づかされるとは・・・。小学校の指導要領もわからないし、ここは自分の家なりのルールを設けるしかないな、と。具体的にお話すると長くなりますので割愛しますが、大した事はしていません。Amazonアレクサで学校のチャイムを毎時鳴るように設定して時間割を作り、通信制の学習プログラムに入会、午前は学習系の勉強・午後は芸術や運動を。という具合です。
大変でしたが、良い事もありました。大きな発見だったのは、教える所から、理解・記憶し、応用する。その全てのプロセスをこの目で見れた事。通学時には不可能ですし、どこか「いいや」と人任せにしていたんでしょうね。それが全て自分の目の前で起きると「多分、これからは今まで通りにはいかないだろうな。」と思うようになったのです。子供一人の勉学にしても、学校より親がメインで教育をガイドしていく時代が来る。子供にとっての自分らしさは、他でもない親が作って行かなければ、と。(やってらっしゃる皆様にはお恥ずかしいですが・・・)今は学校が再開し、喜んで行っていますが、良く見てみると在宅中に覚えた絵の具を使い、色々な所に活かしていたり、自分が教えた事が育っているのが分かります。父親目線かもしれませんが、もしもこれが他の人から教わった事であればそこまで見えないような気がしています。
自分らしさの入り口
人並みという言葉があります。集団心理の高い日本独特の表現であり思想。この考え方は嫌いではないですが、周りの人に合わていくような時代はそろそろ終わっていくのかな、そう思っています。今までは何かの情報をお手本にしていれば良かったけれど、これからはおそらくそうはいかなくなるでしょう。自分とその周りをまず大切にする。その指針はテレビなどからではなく自分で見つける。・・・では、自分らしさっていきなりできるものではないですし、どうやって作って行けばいいんだろう?と思いますよね。僕は人や事業のコンセプトを作る事を仕事としていますので、ある程度お話するとその人がわかるのですが、その特徴のひとつとして「持ち物」があります。その人らしさは、何をどう使っているかに出る。そしてそれが情報によって持っているのか?本当にその人らしい持ち物なのか?も大体わかります。
買ったばかりの新品は、この間までお店にあった物ですから、やはりまだ自分らしい持ち物とは言いがたいですよね。そして最初は、“こう使おう”と思っていても日が経つ内にそれも少しづつ状況が変わってくることも。そして、暫く使っていると「いつもここにあるよな~。」とか「結局、こうやって使っている気が。」はたまた、「結局全然使ってないじゃん。」という事が起きてくる。実は、そこに「自分らしさの入り口」が潜んでいる事を発見しました。
プロダクトの行く先
過去6回のエッセイの中で登場したプロダクト達もその時とはまた違う使われ方をしています。例えば、 モバイルディフューザーのkōは、仕事の切り替え用として迎え入れたつもりが、いつの間にやら寝室にあることが多くなりました。ミントの香り(C07ピュアグリーン )を常時入れておき、寝る前にポチっと押すだけ。気分が落ち着いてあっという間に眠れるんです。香りを嗅ぐ=寝るという思考回路にまでなっているかもしれません(笑)。ベッドサイドテーブルの引き出しの中にアロマ瓶をしまっておき、香りがなくなったら足す。入眠用アイテムとして定着してしまいました。僕にとっては、ここがこのプロダクトの行く先だったのかもしれません。
ボデガのグラス 。マルチに使えるので、色々な場面で活躍しています。安くて頑丈、和洋問わずの万能選手。これも使っているうちに辿り着いた、僕なりの安息の地があります。それは意外にも子供用グラス。元々子供用として、つよいこグラスという物を使っていたのですが、これが倒れるんです。きっと倒れにくく作ってあると思うので製品のせいではないでしょうけれど、飲み物を盛大にテーブルにこぼします。一方ボデガはというと、絶対に絶対にこぼれません(笑)。そもそも倒れる形状ではないので当たり前ですが。
子供にとっては少し大きめだと思います。ただその分両手で丁寧に扱おうとするので、食事中のドリンクバシャー事件は激減します。使い始めた時はまさか子供用とは考えてもみなかったのですが、たまたま大人用と子供用を交換して使ったのがキッカケ。ここだったんだなぁ~と。きっと、3歳以上のお子さんがいらっしゃる方へのプレゼントには良いかもしれません。
時間が経つと自然と集まってくる所
たまたま、時間が経つごとに使い方や居場所が変わった物達ですが、僕はここに「自分らしさの入り口」があると感じています。自然と物が集まってくるということは、そこの居心地を良くしようと自分が無意識に思っている証拠ではないでしょうか。例えば僕ならば、「寝ること」。ここには興味があるでしょ?と言われると、確かに・・・。そうしたら、その周りを見てください。枕やタオルケットなど、いつか買おうと思って揃えていなかったり、古くなっている物はありませんか?もしあったら是非そこに新しい物を導入してみてください。そこにお金を使ってみてください。きっと「寝ること」がもっと好きになると思います。やがて自分の生活の中で、大切な要素だって事を再認識するようになります。そしてそれは、自分らしさの一部に必ずなっていきます。「なんで、ここにあるんだろう?」もしそう思ったら、そこは「自分らしさの入り口」かもしれません。
つづく
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オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。
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