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love letter from K. Season2「自分」 すっきりのその先に

ストア:KOZLIFE掲載日:2020/10/02
コンセプター・和田健司さんによるエッセイ「love letter from K.」。
KOZでのお買い物がもっと楽しくなるヒントをお届けします。

すっきりのその先に

みなさん、こんにちは。ここ数回に渡り「自分」というテーマでエッセイを綴っていますが、そろそろ話は終盤にさしかかってきました。色々な出来事と共に2週間に1回自分が考えている事をお伝えしてきましたが、良い時もあればそうでない時もあり、なかなか思うようにいかない世の中の流れの中で、何かひとつでも自分らしさを考えるキッカケを作れたら嬉しいです。

ゴリ

前回の僕からのメッセージは「自分の周波数に従って行動してみてください。」というものでした。そういう自分はいつ自分の好きな事を見つけたんだろうと改めて思い返すと、ひとつの事件が思い浮かんだのです。

中学2年生の夏休みの事。僕は美術部に入っており、先生から「光るオブジェを作る」という夏休みの宿題が出されていました。先生は背が高くてガタイが良いので、生徒からはゴリと呼ばれていまして、結構何でもやらせてくれる気前の良い先生でした。宿題に気合いが入っていた僕は、当時美大教授だった父親に何か面白い素材はないか?と聞きました。すると父は「これは光ファイバーと言って、最近ちょっと注目されている素材なんだよ。」と透明の細い春雨のようなものを僕にくれたのです。(当時は1990年位)光ファイバーは片方の断面に光を当てるともう片方が光り、何本も束ねると幻想的な照明のようになります。当時の中学生の自分には、こんな綺麗な物が世の中にあるのか!と感動的し、これだ!と気合いを入れて作品作りに打ち込みました。
完成した作品は、ボール紙の筒に光ファイバーを沢山差し込んで固定し、ちょうどイラストのような半球状のドームのような形にして、下にライトを当てるとクラゲのようにフワフワと光ると言うものでした。自分では結構上手くいったと自信もあり、おそらく若干得意そうに見せたのを覚えています。しかし、作品を皆の前で見せた瞬間にゴリ先生がこう言い放ちました。

「なんだ?このゴミみたいなのは。」

ショックのあまり数秒立ち止まった僕は、「一生懸命作ったものを、ゴミなんて言うな!!!!」と作品をゴリに向かって投げ捨て、美術室の片隅でうずくまって泣いてしまいました。それ以来その作品はどこかに捨ててしまったのか見ないまま。多分ゴリはその後「ごめん・・・」と言ってくれたような気もしますが僕の中には憎悪の塊だけがメラメラと音を立てて燃え続け、その時の事はあまり覚えていません。今となっては良き思い出ですが、30年経ったとしても子供の作品を見た瞬間にゴミと言ってしまうのはデリカシーがないなぁと。先生、前の日に嫌な事でもあったんでしょうかね(笑)。

この衝撃的な出来事をきっかけに僕は「絶対に美術では誰にも負けない」と思うようになりました。自分が好きだろうと思っていた事を「けなされた」ことで改めて「本当の自分の周波数」に気づかされました。今こういう仕事に就けているのも、少なからずゴリのお陰だと感謝をしなければいけないですね。自分の本当に好きな事って、傷付けられると怒りの感情が出てくるのではないでしょうか。こうやって見つかる「自分の周波数」あるみたいです。あなたにはこんな感情を抱いた事はありますか?

歌わせるのは何?

みなさん、気がついたら「フンフン♪」と鼻歌を歌っていた事はありますか?そんな人を見かけると、何か良いことあったのかな?と思ってしまいます。結構無意識に歌っている場合があると思うんですが、きっと嫌な事があった時には絶対に出てきませんよね。

ちょっと哲学的な見方をすると、この「鼻歌コンディション」が結構自分の良い状態なんじゃないかと思うのです。大した出来事じゃないんですが、お風呂が気持ちよかったとか、よく寝れたとか、前に比べてちょっとだけ心地の良い変化が自分に起きた時、鼻歌が出る。もちろん必ずしも歌ってないといけない訳ではなくて、そのコンディションになっているのが自分にとって非常に良い気がします。そして、そのきっかけになっているのが、実は何かを新調したり買い替えたりした時に割と多いんじゃないかと思うんですよね。

鼻歌コンディションの作り方

歯ブラシとかは頻度が高すぎてあまり変化を感じにくいですが、例えば空気清浄機のフィルターを変えた後、タオルを総入れ替えした後などはちょっと気分が良くなります。最近の我が家ですと、テフロンのフライパンが摩耗してきたので入れ替えたり、ナイフ類を新しい物に入れ替えしました。普段の包丁は研ぐのであまり買い替えませんが、最近3本目の買い替えをしたヴィクトリアノックスのベジタブルナイフ。新品卸したての時の切れ味は、芸術的の一言。パンも野菜も、引くだけでスーッと切れていきます。小さいので食卓に出してもオシャレですし(※)普通の包丁では潰れそうな具材も見事にスパッと。 (※小さなお子さんがいるご家庭は、くれぐれもケガなどにご注意ください。)

包丁ですと仰々しくて屋外に持って行きづらいのですが、我が家では専用のナイフケースに入れてピクニックに持って行ったりしています。おかずを切り分けたり、意外に役立つ場面が多く、片付けもペーパー類でさっと拭くだけ。そんなナイフも、1年位使い続けると切れ味が若干落ちてきます。なんとか延命して1年半位の頻度で買い替え。そしてまた新品の切れ味が戻ってくる。些細な消耗品の買い替えですが、結構料理に響く影響は大きいと思っています。フライパンなどもそうですが、調理道具を買い替えるのは、料理中に鼻歌が出やすくなる気がしています。そんなコンディションで出来た料理は、いつもより美味しい気がするのです。

心地の良い道具を

ナイフはほんの一例ですが、道具というのは「使う事で自分や周りに現象や体験を生み出せる物」です。すなわち、何をどう使うかでどんな体験になるか変わってくるということ。使っていて気持ちの良い物は、使っていて「すっきりした感覚」になる気がしています。「あぁやっぱりいいわ、これ。」と心がコメントしそうな感じです。そんな満足している自分から生み出された出来事は、必ず周りの人を心地良くするはず。なぜなら、相手が嬉しそうに何かをしてくれそうだと気づいた時、既に自分の中ではそれを受け取るモードになっているから。これこそ豊かさだと思うんですよ。実は少し前にそんな出来事が突如起きました。その話は次回に。

つづく。
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和田 健司
オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。
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