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love letter from K. Season2「自分」  愛用品と私 ー後編ー

ストア:KOZLIFE掲載日:2020/11/20
コンセプター・和田健司さんによるエッセイ「love letter from K.」。
KOZでのお買い物がもっと楽しくなるヒントをお届けします。

愛用品と私 ー後編ー

KOZLIFEでお買い物中の皆さん、衣替えはしましたか?外は寒いし室内は暑いし、着る服がいまいち定まらない季節ですね。そしてマスクをしていると体感温度が1度くらい上がったような感覚になり、ますます良く分からない感覚になります(笑)。さて、前回は愛用品についてお話をしました。昔から「全ての物には魂が宿っている」と信じている日本人にとって身近な存在の「愛用品」。誰もがひとつはあると言われていますが、周りの人に「愛用品ってありますか?」と聞いてみるとあまり良い返事は返ってきません。実は今私たちの身の回りに変化が起きているのではないか?と疑問を追ってみることにしたのです。

使えない思い出

先日、祖父母の法事で実家に戻った際、親戚の叔母と話をしていると「健ちゃんは会ったことないと思うけど、あなたのひいおじいちゃんは昔輸入文具店をやっていてね、船で何ヶ月も掛けて仕入れに行ったりして。当時は相当ハイカラ(今で言うオシャレ)だったのよ。全身白い服を着てたのをすごく覚えてるわ。」と。実は僕、このひいおじいちゃんの事がかなり気になっていまして、昔祖母が亡くなった際の遺品整理の際、なぜかその写真が入ったアルバムを欲しいとお願いして自分の家に持ち帰ったのです。以来大切にしまってあり、その事を伝えると叔母はかなりびっくりした様子で「今の仕事と何か縁があるのかもしれないねぇ。」なんて微笑んでいました。
久々の実家での休日。自分の部屋に仕事をするスペースでも作ろうと整理整頓する事に。ついでに押し入れの中も・・・と開けてみると、ゲーム機や音楽プレーヤー、学生時代の作品ファイルや画材まで昔の思い出の品々が大量に出てきました。おそらく20年位開けられることなくしまってあったみたい。懐かしいなぁと一通り堪能し、また元の場所に戻しました。そこでふと思ったのです。「きっとまた何年も見ないんだろうな。懐かしいから捨てられないけれど、物の身になってみれば幸せじゃないよな。」と。飾ってあげたりすれば少しは浮かばれるのかなぁ、ひと思いに処分するか?とも思いましたがやっぱりできませんでした。

不思議ですよね。どれだけ思い入れがあったとしても物には寿命があり、使ってあげたくても使えない。その反面、今身の回りにあるものは毎日触れているのに、買い替える時はそこまで心苦しくありません。

輪郭が溶けていく

思い入れがあっても使えないものがあり、思い入れはなくても毎日使うものがある。大切にしているアルバムでさえ1年に1回見れば良い方で、スマホに入った写真は頻繁に見ています。ゲームソフトもダウンロードが主流となり、カセットにフーッと息を吹きかけてからゲームを始めることもなくなりました。こうやって知らない内に、身の回りの物達から輪郭が溶けてなくなり、形よりもその中身だけで存在するようになってきているのではないでしょうか。その中身というのは、贈ってくれた人の気持ちだったり、一緒に使ってきた家族との思い出、それを使って頑張ってきた自分の経験値。どんな物かよりも”どんな時間を過ごしたか?”の方が重要なのです。そこに”愛”を感じるようになってきているのではないでしょうか。

愛用品の機種変更

2年ぶりに携帯を買い替えました。少し大きめのiPhone XsからiPhone12miniへ。手のひらにスッポリと収まり、片手で操作できるサイズ、そしてデザインも以前のiPhone5を彷彿させる形へと進化?退化?しました。
数日使ってみると、外観が昔のデザインなので新しい物を買った感じがしないのに、実際の使い心地は最新機種そのもの。カメラもとっても綺麗で、持ってると何やら不思議な感覚ですがこのバランスがユニークで非常に気に入っています。iphone12miniは「そうそう、これこれ。」そんな言葉がピッタリ似合うスマホでしょうか。

同じような感覚を求めて定期的に買い替えている物といえば消耗品があります。例えば、お箸がそう。毎日使うものだからどんなに高くても必ず劣化します。1膳で5000円する物も使ったこともありますが多分二度と買う事はないでしょう(笑)。毎日使っていれば木のお箸なんては1〜2年で必ず劣化してきますので。
ここ3年ほどずっと使い続けているお箸は、STIIK。特徴は商品ページをご覧いただくとして、僕の「そうそう、これこれ」は毎年やってきます。先が細いので普通のお箸より繊細につかめる反面、毎日口に入れていると、おのずと先端が潰れてくる。年末に購入したものを正月に下ろし、「今年もよろしくね」とおせちを新しい箸で楽しむ瞬間がとても好き。

こうして考えると、毎年買い替えている割には箸と食事の思い出はリセットされないことに気がつきました。頻繁に機種変更しているのに中身はずっと同じでいる。だからまた次も同じ物を買おうと思える。これだと思える消耗品に出会うと、こういう感覚になるのかもしれません。

愛用品

わたしたちの身の回りには愛用品は少なくなりました。買い換えが多い物なんて一番愛がないと思っていました。でもそれは間違いでした。まさに今、形よりその中身に愛を意味を感じる時代へと変わってきているんだと、そう思うようになりました。買い替えるという事はそれだけ興味があるということ、好きということです。 タオルの吸水力ではなく毎日の疲れを癒すお風呂の時間に、箸という2本の棒ではなく家族で毎日食べる食卓の笑い声に。思い出を作ってくれる物に囲まれれば、どれだけ買い替えたってその中にある心は変わらない。そう考えれば、今まで使ってきた全ての物が味方をしてくれているようで、自分らしくあれそう。そしてこれからもそれは変わらないのではないでしょうか。

Season2 おわり
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STIIK|箸(2膳1セット)【メール便】
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3,300円
和田 健司
オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。
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