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love letter from K. Season4「ヒト」 夏は夜の光 ―前編―

ストア:KOZLIFE掲載日:2021/07/30
コンセプター・和田健司さんによるエッセイ「love letter from K.」。
KOZでのお買い物がもっと楽しくなるヒントをお届けします。

夏は夜の光 ―前編―

太陽がギラギラと眩しいですね。この季節に大敵なのは日焼け。対策をせずに放っておくと肌が真っ赤になり、ヒリヒリ痛くて眠れません。誰もが子供の頃一度は経験しているのではないでしょうか。よくよく考えてみると、あんなに遙か遠く彼方にある天体の熱がここまで届いているなんて、どれだけ強いエネルギーなんでしょうね。今回のLLFKは、人間にとって必要不可欠な「光」について2回に渡ってお届けします。

太陽の記憶

充実した一日は気持ちの良い朝から始まります。脳がシャキッと起きるために効果があるのは太陽の光。目覚める時間に合わせて部屋を明るくすることで、深い睡眠から浅い睡眠へ誘導され、目覚めの気分も安定します。まだ寝足りない…と二度寝したくなる心をぐっと抑え、カーテンを開けたり部屋の電気をつけ、その明るさに慣れること5分。眠気は消えてどこへやら。
脳が光により覚醒するというのは割と知られていますよね。僕も色々試してみましたが、部屋の天井の照明を起床と同時に点けるのが一番目覚めが良いです。今では日の入りのように徐々に明るくなるスマートライトも売っているそうで、少し興味あり。直感的にいいなと思うのはなぜなんでしょうね?やはり太陽を連想しているんでしょうか。ひとつ間違いがなさそうなのは、脳は上からの光を感じると「朝だ」と記憶しているんだと思うんです。人間は太古の昔から太陽と共に生きてきましたから、日が昇ると動き出し、日が沈むと休息するという習性がDNAの深いところに刻み込まれているのでしょうか。

下から当たる

旅先で訪れた森林、すがすがしい日差しが降り注ぐ中、散歩をする。想像しただけでも良い空気が吸えそう。そして、日中歩き回って疲れた身体を宿泊先の旅館の温泉で癒す至福の一時。特に夜の露天風呂が個人的には好きで、何も考えずにゆっくり外を眺めるのです。そんな露天風呂の景色の中、ずっと気に入っているのが「下から光が当たっている樹木」です。
露天風呂には割とよくある光景ではないでしょうか。温泉の音と相まってついついぼーっと眺めてしまいます。木というのは、元々日光が上から当たって育つ物。それが真逆の下から照らされていると人間の脳は「非日常」と感じます。これも露天風呂のリラックスした空間を支える大事な要素と言えるでしょう。
光の高さが人間に与える影響は大きい。例えばヨーロッパではディナーになるとシーリングライトを消し、テーブルにロウソクを点けるという文化が古くからあります。文化というのは、心地良いなと思う過ごし方が何万日と蓄積されて作られる物。そう考えると、天井の蛍光灯から光々と降り注ぐ明るい部屋の中で取る食事というのは、脳にとってはランチもディナーも同じ時間帯に食べているようなものです。もちろんなぜ日本の部屋がこうも明るいかというのは別の理由があります。戦前から戦後にかけて、白熱球の裸電球1つが灯る暗い家屋に、多くの日本人は住んでいました。そのため裸電球には「貧乏」というイメージがつきまとっていると言われています。確かに夜でも明るくできる程繁栄しましたというのは象徴にはなるでしょうけれど、今は2021年。過ぎ去りし良き時代だったと思い出に残し、新しい光との付き合い方をするべきだと思うのです。

太陽を持ち歩く

20年前であれば照明は高熱になりとても危険、落とすと割れてしまう物も多くありました。それからLEDが発達し、照明の自由度は飛躍的に進化を遂げています。自然物と同じ周波数を出すものや、外の明るさと同調して部屋を照らしてくれる照明もあります。いずれ天井自体が空を演出するようになり、窓がない壁にも窓と同じような光を取り入れる事のできる装置が出てくるでしょう。

お家時間が多い昨今ですが、照明を変えると過ごし方も一変します。照明設計的には、目線より上に照明が多くあると脳は覚醒し、下にあると脳は休息を促します。なので日没後はシーリングライトは消して、フロアライトやスタンドライトを使うと身体が徐々にリラックスへと向かいます。 (本当に簡潔にまとめましたので、本当はもう少し複雑ですが詰まるところこういう事です)
夜の過ごし方といえば、本を読んだり書き物をする事があるので、できれば昼間とは違った雰囲気で気分転換しながらやりたいなと、小さめの照明を探していました。実は少し前までバルミューダのランタンを使っていまして。雰囲気は良く明るさも調節できるし機能的なのですが、リラックスし過ぎてしまうのか、何かちょっと違ったのです…。今思えば、下から光が上に向かっているので脳が「休もう」と認識していたのかもしれません。結構探してみると、これだ!というものがなかったのですが、最近遂に見つけてしまいました。

次回後編につづく
(次回は8月20日更新予定です。お楽しみに!)
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和田 健司
オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。
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