静岡県・焼津。カツオ漁の漁港としてよく知られる街は、大井川の水流に恵まれ、古くから稲作も盛んな土地。
土と、そして生きものの力で育まれたお米をお届けします。
コシヒカリ本来の、みずみずしさと甘み。冷めても美味しく、お弁当やおにぎりにぴったりですよ。
杉本一詩さん(静岡県焼津市)
杉本さんのお米は、どこか懐かしいような、ほっとする味わいです。
お父さんの田んぼを継いで30年あまり。ひとつひとつ試行錯誤を繰り返しながら、農薬、肥料を一切使わない米づくりをつづけています。
どんな想いで田んぼに向き合っているのですかと尋ねると、「お米のことは、語りだすと三日三晩かかるよ~」と嬉しそうに話してくれました。
田んぼを継いだとき、お米づくりの知識はほとんどなく、田植えをしたら収穫まで「ほったらかし」だったといいます。
けれど、数年間そのような調子で農薬も肥料も入れないでいると、田んぼに生きものが増えていきました。
カエルやメダカやドジョウが泳ぎ、カモやサギが降り立ち、クモやバッタやヘビがあぜ道を動きまわる。これは面白い。生きものと一緒に農業ができたら楽しそうだ。そう考えた杉本さんは、生きものの賑やかな息吹を感じる田んぼでお米づくりをしようと、真剣に取り組みはじめました。
小さな虫をカエルが餌にし、カエルを鳥が餌にし、そのフンを微生物が分解する。生きものの営みが土を豊かにし、お米を育む土台となっています。
杉本さんも刈り草や稲わらを入れ、こまめな水の管理も行って、生きものにも稲にも良い環境を整えています。
一般に、稲は、種が発芽し、5~6cmくらいに伸びて最初の葉が出るまで加温を行います。
しかし杉本さんは、発芽した時点で加温をやめます。すると稲は3cmぐらいに伸びたところで葉を出すように。これによって、安定した頑丈な苗が育ちます。加温期間が短いので、環境負荷も抑えられます。
そして、育った苗は、3日に1回、ローラーでぺしゃんこに折ってしまいます。稲はその修復に力を使うので、成長がゆっくりに。太く、しっかりと根が張るようになります。肥料を与えなくても、粘り強く生きていけるようにしているのです。
杉本さんの田んぼは45枚ほど。しかも地域に点在しているので、田植えや稲刈りの時は1枚終わって移動して、また1枚の繰り返し。
「土地が空いたらまずは大きな農家さんに話が行くから、私のところにまわってくるのは小さくて手入れがしづらい田んぼが多いんです」
三角形やくねくねした形のものもあるそう。世話は大変だけれど、それもまた面白いと杉本さんは話します。
「田んぼによって土質、水の流れてくる温度が違う。お米の育ち方が違う、味も同じようで違う。それが田んぼの個性。それが当たり前だと知って、その時のお米を楽しんでもらえたら嬉しいです」
今、お米づくりをする生産者さんは減少し続けています。田植え機やコンバインなど、数百万円単位の農業機械が必要なため、農業をしたくてもはじめられない、はじめてもつづけられない人が多いのです。
「自然に近い栽培方法で育てていると、ホウネンエビ、メダカ、ミジンコ……いろんな生きものが田んぼに帰ってくる。秋には稲穂の上に赤トンボが舞うから、一緒にやろうよ。10年後に蛍が飛ぶような町にしようよ」杉本さんは、同じように農薬や肥料を使わないお米づくりをする農家さんからもお米を買い取り、いっしょに販路をつくっています。焼津から少しずつ環境負荷の小さな農業をひろげようと取り組んでいるのです。
「しっかり食べてもらうことで、農家が田んぼをつづけられる。環境が守られる。単に農薬や肥料を使っていないお米だからではなく、その先を想像してほしい」と話してくださいました。
■小石や種の混入について
坂ノ途中がお取り引きしているお米農家さんは大規模とは言えません。大手の精米所で用いられるような高性能な選別機を使用していないことがほとんどです。そのため、丁寧に選別はしているものの、稲刈り時の小石や、クサネムと呼ばれる雑草の種(小さな黒い粒)がお米に混ざってしまうことがございます。
お米の品質には問題ございませんので、お米を研ぐ際に取り除いてお召し上がりいただければと思います。気になるような状態でしたら、お手数ですがご連絡くださいませ。
■お米の保存について
虫などの侵入を防ぐために倉庫の管理や選別機でのチェックを丁寧に行っていますが、まれに「コクゾウムシ」と呼ばれる虫がお米の中に入り込んでしまうことがございます。
虫は、畑ではなく収穫後に侵入し、お米に産卵して増えていきます。虫が侵入したお米がひと粒でも入ってしまうと、特に常温保存では短期間で増えてしまうことがございます。
気温が20度を超えると活動が活発化し、お米の中から羽化しますので、気温の高い時期は必ず冷蔵庫で保存し、できるだけ短期間で(お届けから30日を目安に)お召し上がりくださいませ。
■白米の精米日について
精米から1か月以内のお米をお届けします。
■玄米の調製年月日について
玄米には裏面の品質表示ラベルに調製年月日を記載しております。
調製年月日とは、農家さんがもみすり(稲もみからもみ殻を取り除いて玄米にする作業)をした日付のことです。
年に1度のお米の収穫に合わせてもみすりをする農家さんが多いため、調製年月日には稲刈りのころの日付が記載されていることがほとんどです。
玄米は、白米と違って、長期保存してもほとんど劣化しませんので、調製年月日から時間がたっていても品質には問題ございません。
当店では、原則ギフトラッピングを承っておりません。大変申し訳ございませんが、予めご了承ください。
坂ノ途中が目指しているのは、環境負荷の小さな農業に取り組む人たちを増やすことです。100年先にも、さらにその先の世代にも豊かな土地を残していける、そんな持続可能な農業のかたちをつくりたいと考えています。
坂ノ途中が提携している農家さんは、「ほんとうに美味しい野菜をつくりたい」という気持ち一心で「環境に負荷の少ない農薬・化学肥料に頼らない農業」の道を選んでいます。
土の力を生かし手間ひまかけて育てられた野菜を多くの方が食べてくだることが、農家さんたちの挑戦を支え、培われた技術と経験は次の世代へと伝えられていきます。
私たちを取り巻く環境を大切にしながら、本当においしい野菜をつくり、食べる暮らし。そんな暮らし方の「輪」を広げていくことにも繋がります。
合鴨農法をしなくても、野生の鴨がやってきます