こんにちは。sisam FAIR TRADE店長のタニです。
今日は「世界フェアトレードデー」です。
「世界フェアトレードデー」とは、WFTO(世界フェアトレード連盟:World Fair Trade Organization)に加盟する世界約70ヵ国、300団体以上のフェアトレード組織と生産者組織を中心に、世界中でフェアトレードをアピールするイベントやキャンペーンが同時開催される日です。
私もお気に入りのsisamのカディシャツを着て出勤です!
フェアトレードの服を身に着けてみたり、フェアトレードの食べ物を選んでみたり。
ささやかでも、社会に優しいさざ波をたてられるような小さなアクションが、世界中で起こる一日となりますように^^
今回、スタッフがオーガニックコットンの生地づくりの軌跡を巡ったインド出張記をご紹介させていただきます。
オーガニックコットンアイテムをご愛用いただいている方も、これから出会っていただける方も、ぜひご一読ください。
オーガニックコットンを辿る旅~ インド出張記~
昨年の夏、sisam FAIR TRADEのデザイナーは数年ぶりのインドの地に立っていました。
コロナ禍の影響により、何年も叶わなかった出張。
熱気ある町や人々は、変わらずそこで私たちを待ってくれていました。
今回の出張の目的の一つ。
それは、オーガニックコットンの生地づくりの軌跡を辿ることでした。
着る人も見る人も心が華やぐスクリーンプリントのコレクション。
これらはすべてオーガニックコットンの生地により作られています。
オーガニックコットンの生地は、どこから来ているんだろう。
どんな人たちの手を通ってきたのだろう。
インドに行くからには、自分たちの目で確かめてみたい。
服作りを担当するCreative Handicraftsのスタッフとともに、旅が始まりました。
糸から生地へ ~人の手ありきの機械織り~
訪れたのは、インド最南端の州、タミルナードゥ州のエーロード(erode)という町。
ココナッツのプランテーションが並ぶのどかな風景が車窓から流れていきます。
この町にあるのが、BTCという生地の織り工場。
オーガニックコットンの糸が、生地として形になる工程です。
工場長のバルさん、シシハラさんご夫婦が温かく迎えてくれました。
大きな機械の並ぶ風景を想像していたのですが、BTCでは古い機械と人の手により地道なものづくりが進められています。
特に経糸を織り機にかけるのは、手作業でなくてはいけません。
多いものでは300~400本ほどの細い糸を織り機にかけていきます。
途中で切れてしまったら結びなおさなければいけない、とても繊細な作業。
sisam FAIR TRADEのものづくりのなかで「機械織り」の生地が多くありますが、現地を訪ねると、人の手にゆだねられた温度ある工程だということを改めて感じます。
一日中駆け足の見学で、お腹がぺこぺこ。
途中でみんなでお昼ご飯タイムです。
そこで、はじめてのお料理をいただきました。
ヨーグルトで蒸したお米を、バナナの葉に包んであるんです。
ざくろやカレーリーフも入っていて、それはそれは爽やかな味。
インド料理は、スパイシーでこってりなイメージですが、こんなヘルシーなものもあるのか。
地元の人たちと食を囲むことで、また新しいインドの顔と出会うことができました。
綿から糸へ ~うどんからそうめんへ~
次に訪問したのは、生地のもとになる糸を作る工場「スピニングミル」。
今回訪れた場所はとても大きな工場でした。
綿を機械に入れてゴミを取り除いて、だんだん細くなっていく。
うどんから冷や麦、冷や麦からそうめん…といったイメージです。
大規模な機械が動き、ほぼ人の手が入らないオートメーション化が進んでいるところが多いそうです。
コットンの仕分け~循環するものづくり~
次なる場所は、「ジニングミル」というコットンを綿と種に仕分ける工場。
ここの人々は、コットン農家の人々をサポートするための非営利組織として働いています。
オーガニックコットンの種を、まずこの組織が購入をします。
補助金を申請することで、種の半額はインド政府から受け取ることができ、最終的に、小さな農家の人々は半額で種を購入することができるという仕組みです。
農家とのコミュニケーションは密なもので、収穫ができたら畑まで直接トラックで受け取りにいくのだと教えてくれました。
コットン収穫前のタイミングに農家さんに一部を前払いをし、収穫後に残りを支払うという形をとることで、生産者の安定した生活を支えています。
小さな農家の人々が自ら補助金などの制度にアクセスすることは難しく、自分たちが大事な役割を担っているんだと話されていました。
ただコットンの値段は、農家の人々との交渉で決めます。
支援しているだけじゃなく、お互いがよりよく生活をしていくためにフェアな立場で意見を交わし合う。
「フェアトレード」の姿が垣間見えたお話でした。
仕分けた種のほうは、販売して再利用したり、コットンオイルや牛のエサにもなるそう。
さらにコットンオイルで出た絞りかすさえも、燃料として再利用されます。
人も資源も、循環するものづくりがここではおこなわれているのです。
さぁ、旅の最終地点は、コットン畑です。
始まりの大地へと向かいましょう。
コットン畑 ~大地と人が笑えば~
この町ではたくさんのコットン農家があるため、正確にはどの農家のコットンが、私たちの服へつながっているのかはわかりません。
今回は、少しでもその可能性がある農家を訪ねてみました。
訪問したのは、8月初旬。
ピンク色の花がちらほら、コットンの綿が開いた状態のものもちらほら。
当たり前のようにコットンに集まってくる虫たち。
化学の力ではなく、大地の恵みと自然の力のなかで、コットンとそれをとりまく命が、ありのままの姿で育っていることがよくわかります。
ここでは3人の女性がおしゃべりをしながら収穫をしていました。
山を背景に、広大な大地が広がり、牛が時折のどかにモ~と鳴く。
あらゆる生き物と植物が太陽のもとでのびのびと命を伸ばしているようです。
もう一つのコットン農家も訪れました。
畑の近くでみんなで集まって楽しそうに作業をされていたので、そこに少し混ぜてもらいました。
農家のオーナーのお母さんと、作業に参加している近所の人たちです。
コットンは植えてからだいたい4カ月で収穫できるそうで、ここでは年に1回収穫して、雨季は米を育てています。
他にもお芋やココナッツ、グアバ、カレーリーフなど、さまざまな作物を育てているそうです。
大きな企業が大規模に栽培するコットンではなく、家族単位の小さな農家の人々が風土や暮らしに合わせて栽培をしているコットン。
普段なにげなく着ているsisam FAIR TRADEのオーガニックコットン服も、そんな誰かの暮らしの呼吸が宿っているのですね。
ますます愛着が深まるような気がします。
2日間に渡るコットンの旅も終わり。
ふと振り返るのは、この町に根付く人々の営みです。
工場でお昼ごはんをいただいた料理は、食材はすべてオーガニックだとシシハラさんが教えてくれました。
体に入れるものを大事にする概念が、もともと日々の生活のなかに沁みついているのかもしれません。
お皿の代わりに、バナナの葉。
のどが渇けば、ジュースを買うかわりにココナッツを割ります。
「オーガニック」や「エコ」、「SDGs」というものが言葉として広がる前から、この場所には私たちが目指し、取り戻していきたいものが、生活と等身大の形で在り続けているのだなと思います。
今の世界で、そしてフェアトレードの現場で、オーガニックコットンの服を作ることは、仕組みや環境、そして価格の面でも決して簡単なことではありません。
世界のコットン栽培のなかで、オーガニック農法はわずか1%ほどです。
それでも今回、初めて自分たちの目でその軌跡を辿ったことで、その「1%」が単なる数字ではなく、人々がたった今も自然と地道に向き合い生きる姿なのだということを知りました。
私たちはこれからも、オーガニックコットンが当たり前にある世界をあきらめません。
このものづくりの道程を共に歩いていきます。
( sisam FAIR TRADE店長 タニ)
出張スタッフ: デザイナー ミズカミ・タカハタ
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