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【バイヤーピックアップ!】誰かのジョークをそのまま本にしただけ。極めて不親切で痛快なペーパーバック

ストア:CDC GENERAL STORE掲載日:2026/04/20
綺麗な写真や美しいグラフィックのアートブックを求めているなら、この本は絶対に買わない方がいいです。表紙からして一切の媚びがありません。アメリカの現代アーティスト、リチャード・プリンスの作品集『JOKES & CARTOONS』。
JOKES & CARTOONS by Richard Prince/アートブック リチャード・プリンス
JOKES & CARTOONS by Richard Prince/アートブック リチャード・プリンス
8,250円
裏表紙から中身に至るまで、延々と英語のジョークやカートゥーンが印字されているだけです。ぶっちゃけて言いますが、日本の読者の9割はこのテキストを一行も読まないでしょうし、私もまともに読んでいません。ただ、この本に関しては「読まないこと」すらも正解なんです。
リチャード・プリンスといえば「アプロプリエーション(盗用)」。雑誌の広告などをそのまま撮影して自分の作品として発表する、著作権ギリギリの物議を醸す手法で知られています。この本も、アメリカの雑誌に載っていた取るに足らないカートゥーンやジョークをただ集めて再構築しただけの代物です。
ここで少し彼の「ジョーク」シリーズについて語ります。1980年代後半から彼が作り始めたこのシリーズは、キャンバスにただジョークのテキストだけをプリントしたという、美術市場の権威を小馬鹿にしたような作品群です。大衆向けの雑誌の片隅にあった消費されるだけのユーモアを、わざわざ高価なアートの文脈に引きずり込む。この本自体もその構造と全く同じで、立派な美術書のようなハードカバーではなく、アメリカのスーパーのレジ横で売られているようなチープなペーパーバックの質感を意図的に選んでいます。ザラついた安っぽい紙質に、味気ない黒のインク。アートブックとしての高級感を自ら完全に放棄したこの突き放した仕様に、たまらなくシニカルな魅力を感じるんです。
時折こんな殴り書きのメモのようなページも平気で混ざってきますが、親切な解説などは一切ありません。そもそも他人のジョークをパクったものに解説をつけるなんて野暮の骨頂ですから。
時折こういう「実用性は皆無だが、物質としての引力が異常に強い塊」に出くわすことがあります。テキストの読めない本を売るというのも、雑貨屋としての痛快なジョークかなと。
きれいに本棚に並べて大切に保管するような本ではありません。デスクの隅や、未処理の書類の山の上にただ無造作に打ち捨てられている姿が、このチープな装丁には一番似合います。
文字を追うのではなく、デザイン的な装飾を一切排除したこの暴力的なまでの文字の羅列を、ただの「インクが乗った安紙の束」として物理的に楽しんでください。
はっきり言って、万人受けする要素はどこにもありません。「誰かのジョークをそのまま本にしただけのアート」という、リチャード・プリンスが仕掛けたこのふざけた文脈ごと丸呑みできる人だけが買えばいい、極めて不親切で痛快な一冊です。
JOKES & CARTOONS by Richard Prince/アートブック リチャード・プリンス
JOKES & CARTOONS by Richard Prince/アートブック リチャード・プリンス
8,250円
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