1932年、旧ドイツ生まれ。
20世紀から現代にかけて、もっとも影響力のある画家のひとりと称されるゲルハルト・リヒター。

抽象と具象、絵画と写真、歴史と記憶──。
相反する領域を往復しながら、常に「絵画とは何か」を問い続けてきたリヒター。その作品は、繊細な写実表現から大胆な抽象まで幅広く、見る人の感覚に深く訴えかけます。

また、戦争や歴史といった重いテーマを扱う一方で、日常の断片や風景をも題材にし、芸術が私たちの暮らしや記憶とどのように結びつくのかを示してきました。

現在でも世界中の美術館で展覧会が開催され、コレクターや研究者だけでなく、一般のアートファンからも絶大な支持を集めています。

リヒターの書籍を手に取ることは、ただの「作品集」を楽しむだけでなく、現代美術そのものの思考を体験すること。
今回はリヒターのの幅広い表現に触れていただける4作をご紹介させていただきます。
作品を通して伝わってくる膨大な熱量は、現代を生きる人の心にきっと響いてくると思います。

リヒターが日頃から収集しているイメージソース(写真・スケッチ・資料など)をまとめた「アトラス」シリーズの第5巻。第5巻はこれまでの作品の学術的なコメンタリーを交えた内容となっています。

作品の裏側を知るドキュメント的な魅力があります。

リヒターが日々集め、思考の断片として蓄積した膨大なイメージ群は、まるで作家の頭の中を覗くよう。

90年代後半から2000年代初頭にかけての主要な作品をまとめた一冊。

具象と抽象の間を往来するリヒターの挑戦が凝縮され、鮮やかなカラー図版がその多彩さを物語ります。

リヒターならではのピンぼけした写真のようなアンニュイな油彩も多数掲載。
時代を映す絵画の変遷を追体験できる一冊です。

リヒターが2001年のイラク戦争報道に触発されて制作したWAR OUT。関連の新聞記事の断片と、リヒター自身の抽象画を見開きで並べて構成されています。

日常に流れるニュース(現実)と芸術表現を交差させ、「私たちはイメージをどう受け止めるのか」を鋭く問いかけます。

時代背景を映し出すと同時に、リヒターの思考の鋭さを感じられる作品集です。

アウシュヴィッツの記録写真をベースにした大型の抽象絵画作品を撮影し、分割して収録。

消し去ることのできない歴史と、その記憶をどのように表現するか。リヒターが絵画で挑んだ重厚なテーマは、見る者に強い余韻を残します。

アートの知識がなくても、リヒターの書籍は「飾って美しい」、「開いて深い」存在。
芸術に触れる入口としても、ライフスタイルを豊かにする一冊としてもおすすめです。