余白なく綿を使うひと。
先日の再入荷により、yohaku、クラシコ、オールユアーズ、ムーンスター、宝島染工ほか衣類を取り揃えております。今日の読み物はyohakuのお話。yohakuの渡辺さんは服について話すとき、綿の栽培のことを教えてくれます。つまりは、農業。農作物を無駄なく使うのと同じように、綿花も余さず使う。ご飯は一粒残さず食べようねと伝えてくれるお母さんのような温かさを渡辺さんに感じたのでした。
服を通して人を知る
yohakuの渡辺さんと出会ったのは確か2014年のことだ。わざわざでは薪窯でパンを焼いている。毎日、粉と水と火にまみれてパンを焼く仕事をしていると着る服・エプロン、全てが最速で綻んでしまう。ハードワークに耐えうる服とエプロンが欲しいと、ずっと探していたのだがどうしても最適な服が見つからない。そんな話をうなぎの寝床 白水代表に話していると、東京にyohakuという面白いメーカーがあるよと言われ、ほいほいと紹介してもらって行ったのが初めてだった。
当時yohakuの店舗は浅草にあって、とりあえずyohakuというブランドがどんな服を作っているかと色々試着させてもらったり、ざっと話を聞いたり、店内を案内してもらったりしたのだけれど、正直、概要が掴めなかった。
現在、実店舗は鳥越にある。小さなビルを一棟、DIYを重ねて店舗と事務所として利用。
渡辺さんが実家の肌着製造会社を継いだのち、カットソーを主体とした自社ブランドのyohakuが始まったと聞いていた。それなのに、備後絣で作ったパンツがあったり、店舗では作家さんの展示会をやっていたり、どうも話と結びつかずよくわからない。ただ、朴訥としているが面白そうな人だなぁという印象を抱き家路についたのだった。
その後、何度も顔を合わせ話し合い、互いの店を行き来し交流を深め、途中パン屋のTシャツ、パン屋の帽子とわざわざオリジナルのヒット商品を一緒に作ったりして、2020年の今に至る。今になってようやく、渡辺さんのことを分かり始めてきた気がしている。だから今回は、改めてじっくり顔を合わせて、やっていることの説明責任を果たしてもらうつもりで取材に伺ったのだ!
2020年はコロナ禍であらゆる出張を避けてきた。10月に入り、飲食店での会食を避ける・自家用車で移動などのルールを設け久々の出張をした。ご飯はおいしいものをテイクアウトしていくので、緩やかに距離を保ちつつ、食事しながら話してみましょうか。
長い付き合いになってきたというのに、そういえば渡辺さんとはあまりご飯に行った記憶がない。毎回話していると時間があっという間に時間が過ぎて、ご飯も食べずに話し続けてお開きという流れが多い。改めて取材を申し込むのも気恥ずかしい気がして、おいしいハンバーガーを頬張ればリラックスしていつものように自然に会話が弾むのではとの策略です。
人形町・ブラザーズのハンバーガー。事前にお好みを聞いておいて差し入れ。
おいしくておいしくて、和やかに取材がスタートしました。
ニットのことから聞いてみよう。
布には大きく分けて2種類ある。織物と編み物だ。
大抵の布は織るか編むかで出来ていて、カットソーなどの伸縮性のあるものは大抵が編み物である。編み物のことを通称ニットと呼び、yohakuというブランドの主軸製品はニットになる。ニットというと毛糸を想像するかもしれないが、そうではなく、いわゆるカットソーや毛糸製品などの編みでできた布製品を総称して「ニット」と呼ぶ。
糸から選び試作を重ねたテスト生地たち。商品化されていないものも複数ある。
yohakuを運営する(株)サンカーべは、渡辺さんがお父様より継いだ会社である。お父様の時代は主に肌着の製造を行っており、OEMが中心でメーカーから仕事を請け負う会社であった。当時は大量生産・大量消費の時代。作ったら売れるというサイクルが日本全体に染まっており、その消費社会に誰も何の疑問も持っていなかったと言ってもいいかもしれない。
会社を引き継いでから渡辺さんは自問自答し、ある日スパッと下請けをやめて自社ブランドに切り替えることを決意する。それがyohakuの誕生だ。
渡辺さんは綿の栽培者の方をさん付けで呼ぶ。サリーフォックスさんのブラウン綿、グリーン綿などなど。
yohakuの定番服は糸から選ばれて、布になり、服になる。
いわゆる下請けの形態をやめてオリジナルブランドを始めた2012年、最初に作った服がジップパーカーであった。オーガニックコットンを使って服を作る場合、多くのメーカーが服の表側にオーガニックコットンを使い、裏地に通常のコットンを使う。下請け時代に、肌に触れる裏地がオーガニックコットンだったらどんなに気持ちがいいだろうと想像していたという。ブランドスタート時に作ったパーカーにはそんな気持ちがギュッと込められていた。
yohakuの定番、茶綿ジップパーカーを着る渡辺さん
オーガニックコットンが使われていますよと主張するよりも、着心地を重視し、感覚として気持ちがいいと感じることを大切にする。渡辺さんの服作りには一貫してその感覚を感じるのだ。yohakuの服をまとった時に感じる柔らかさは、そういう思想から出てくるものなのだと思う。
文責>平田はる香 写真>若菜紘之 編集>鈴木誠史
続きはわざわざのホームページでご覧いただけます。
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ストア紹介
パンと日用品の店 わざわざ
パンと日用品の店〈わざわざ〉は長野県東御市御牧原の山の上にポツンと佇む小さなお店。“よき生活者になる”を合言葉に、薪窯で焼いたパンと、食と生活それぞれの面から、独自の選定基準を定めて自分たちが心からよいと...もっと見る