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2022年5月に、クラウドファンディングで先行販売された『山ノ頂(やまのいただき)』の鹿皮製品が、このたび一般販売開始となりました。
山ノ頂は、en・nichiの中にできた新しいブランドラインであり、有害駆除された鹿の皮を使用した革製品を作り上げています。獣の駆除と聞くとかわいそうな気持ちにもなってしまいますが、今、人と獣、山と里の関係性は大変難しい状況になっており、致し方なく駆除をしなければならない現実もあります。
そういった観点からも、なぜ山ノ頂というブランドが立ち上がったのか、そしてその商品についてご紹介させていただければと思います。
鹿の皮を使う理由
山ノ頂の製品は、岩手県で有害駆除された鹿の皮を使ったプロダクトです。
岩手では現在、鹿や猪による農作物や樹木への被害が深刻な状況となっており、山の獣たちによる農作物被害額は年間4億円以上。その半数以上が鹿による被害です。(令和2年度、岩手県農林水産部調べ)
農家さんはせっかく育てた野菜が獣たちに食べられてしまい、生活が困窮する事態になっており農業をやめてしまうところも増えています。また、山林でも若い苗木を鹿が食べてしまい木が育たず、深刻な問題となっているのです。
そのため、駆除という形で獣の生息数をコントロールする活動も積極的に行われ、岩手では年間約20,000頭以上の鹿が駆除されています。しかし、駆除された鹿の9割は利活用されず、焼却か埋葬という形で廃棄されています。
山と里の距離感や関係性は、難しい局面に来ています。
かつて「神の遣い」などと呼ばれ重宝されていた鹿は、いつしか害獣と呼ばれるようになり駆除の対象となりました。
鹿は、頭数が増えすぎたため山に食べ物が無く、食べ物を求めて里に降りてきています。
当たり前ですが、悪さをしようと思って農作物を食べているわけではなく、生きるために必死になだけなのです。
一方、農家さんにも自らの生活があり、生活の糧となる農作物を食べられてしまうと本当に困ってしまいます。目の前で自分たちのお金を鹿が食べていたら、誰でも黙って見つめているわけにはいかないと思います。
農家さんもまた生きるために、致し方なく駆除をしているだけなのです。
駆除された獣達の命を「山と人を繋ぐ革製品」に変えて
鹿には鹿の正しさがあり、人には人の正しさがあります。
「鹿の命を奪うなんて可哀想だ」「悪さをする鹿なんていなくなれば良い」など、駆除に対して様々な意見があるのも事実です。
しかし、鹿と人の、互いの痛みを見ないままのそんな一方的な考えは、本当に正しいのでしょうか?
かつての先人たちも、鹿に対する可愛らしさや愛着を感じていながらも、生きる糧として命を奪うという矛盾や葛藤を丸ごと抱えていたからこそ、本当の『命への感謝』と『頂きます』があったのではないかと感じています。
この取り組みは、抜本的に害獣被害の問題を解決することができるものではありません。
しかし、岩手が昔から大切にしてきた人と獣、両者の痛みと喜びの「間で生きる」という見えざる精神性が少しでも伝わることが、かつてのような人と獣の良い関係性を未来に繋げていける出発点になると信じ、山ノ頂は歩み出しました。
製品紹介
鹿革はレザーの中のカシミアと呼ばれており、きめ細かく柔軟性があり、使えば使うほど手に馴染んでいく素材です。
また、鹿革独特の結合繊維により、他の革よりも軽く、水や摩擦に強く何年経っても劣化しにくいと言われています。
KOMONO-IRE コモノイレ
柔らかな鹿皮が、繊細な物を優しく包んでくれる小物入れ。
シンプルな作りで使いやすく、鹿皮の質感が際立つアイテムに仕上がりました。
開口部もバネ口仕様で、片手で握るようにするだけで簡単に開け閉めすることができます。
こちらは小物入れとしてだけではなく、コインケースとしてもご利用いただけます。
en・nichi|山ノ頂 | KOMONO-IRE コモノイレ レザー/ポーチ/鹿革【贈り物】
HOGUCHI-IRE ホグチイレ
「火口入れ(ホグチイレ)」とは、マタギの商売道具である火薬を雨から守る丈夫な巾着のこと。
それをベースに、現代でも使える巾着タイプの小物入れとして製作したものが、山ノ頂のHOGUCHI-IREです。
口元をキュッと萎ませることができるので、中の物が飛び出してしまう心配はありません。
無くしたくない、大切なものを入れて。
en・nichi|山ノ頂 | HOGUCHI-IRE ホグチイレ レザー/ポーチ/鹿革【贈り物】
TESAGE テサゲ
スマホ、お財布、鍵など、身近な必需品をこれ一つにまとめお出かけできる、ちょうど良いサイズの手提げバッグです。
裏地は、岩手の山で採れた木材の本来捨てられてしまう樹皮部分から色を抽出した、草木染めで仕上げています。
木材も山からいただいたもの。使えるものは、最後まで大切に使いた。そんな思いで、今回裏地の染めに使用いたしました。
en・nichi|山ノ頂 | TESAGE テサゲ レザー/ショルダーバッグ/鹿革【贈り物】
岩手の自然をモチーフにしたカラーバリエーション
色は「銀鼠(ぎんねず)色」、「炭色」、「ニビ色」の3種類。
岩手の自然をモチーフにした色味は、服装、性別、年齢を問わず幅広くご使用いただける色味です。
あえて塗装はせず染めのみで仕上げており、使い続けることでの経年変化をお楽しみいただける商品です。
野生に生きた鹿のストーリーを感じて欲しい
山ノ頂の商品では、皮の傷をあえて隠さず残しています。
雑木林を駆け回ってついた傷やオス同士喧嘩をしてつけた傷からは、野生に生きた鹿一頭一頭のストーリーを感じることができます。
そのため、山ノ頂では一般的な革製品では使われない傷部分も、野生に生きた鹿の魅力として伝えていきたいと思っております。
売上金の一部を、鹿踊りのイベント開催資金に
山ノ頂の売上金の3%は、郷土芸能「鹿踊り(シシオドリ)」の継承と発展に繋げるためのイベント開催に役立てさせていただきます。
郷土芸能は、担い手不足から継承が難しくなっている団体が沢山あります。
そこに追い討ちをかけるように、パンデミックにより出演舞台はなくなり、活動資金であったご祝儀なども得られず、何百年と続いてきた歴史に幕を下ろす団体も出てきている状況です。
山ノ頂では、郷土芸能の出演の機会を作り、継承に繋いでいきたいとの思いから、売上金の一部を鹿踊りの祭り開催の経費に活用し、鹿踊りの継承と発展に繋げていきます。
山ノ頂は、まだ歩み始めたばかりのブランドです。
今後も新しいプロダクトを展開していけるよう取り組んでいきますので、応援いただけますと幸いです。
もちろん、商品を作るためにわざわざ獣の命を奪うようなことはいたしません。
あくまで駆除の対象となってしまった獣をどう役立てていくか、人と獣の関係性をこれからも考えながら歩んでいきますので、これからも山ノ頂をどうぞよろしくお願いいたします。
縁日公式インスタグラムでも、商品情報などを配信しておりますので、もしご興味お持ちいただけましたらぜひこちらもご覧くださいませ。
ストア紹介
縁日
大正7年(1918年)創業、岩手県一関市の染物屋・京屋染物店(en・nichi)が運営するセレクトショップ「縁日」。
東北のものづくりを中心に、丁寧に作られ、丁寧に使いたくなる暮らしの道具をセレクトし、...もっと見る