“服はいつかダメになるから、定番アイテムをいつもきちんと作っているところに出会いたい”
わざわざ代表・平田はる香が2011年に書いた文章「硬いジーンズはもう時代遅れかもね」の中で、当時の平田はこのように綴り、繰り返し着続けられる定番服を探していました。
“破れたらまた同じのを買おう。もうファッションのことはこういう風にしか考えてなくて、この通りにできるワードロープをここ数年、探している。”
記事では「ジーンズとは硬くて履きにくいもの」「努力によって柔らかくするもの」と語っているのですが、その後の生活環境・仕事環境の変化、また新たな服との出会いから、ファッションに対する考え方が変わってきたといいます。
そもそもジーンズはゴールドラッシュの時代、労働者のための丈夫で破れにくいワークウェアとして開発されたものでした(※)。要するにジーンズの硬さとは「外で」「立って」「体を動かす」当時の労働者にとって必要なもの。現代の労働は「中で」「座って」「手を動かす」ものが中心となり、ファッションに求められる要素も時代とともに変化しています。わずか10年前の2011年と比べても私たちの生活や仕事はまた違う形に変化していて、そこに合わせたい服も永遠に同じではないことがわかるかと思います。
人にどう見られるかで服を選ぶ時代の終焉
わざわざの人気商品で平田も愛用する「ハイキックジーンズ」は、ヴィンテージの雰囲気を纏いながらまるでスウェットパンツのような穿き心地。生みの親であるALL YOURS・原康人代表は、開発のきっかけをこのように語っていました。
“年齢を重ねていくと、体力もなくなっていくし、集中力も衰えていきます。そんなある時、無意識のうちに自分が無理をして服を着ていることに気づきました。硬くて重たい生地を使っているヴィンテージを好んで着ていたからこそ、体のどんな部分にストレスが生まれ、着ていて『しんどい』のか?ということを直感的にわかるようになっていました。その瞬間に自分の今後やるべきことが見えたんです。“
- 《洋服は「かっこいい」だけでは足りない。》より
ALL YOURSは日々の暮らしのための服「ライフスペックウェア」をコンセプトに、その名のとおり使う人(=あなた)のための服作りを信条とするブランド。原代表が語っているように、自分の好きなものを日常的にストレスなく着たいという想いから生まれるALL YOURSの服は、いわゆる“おしゃれは我慢”の時代からファッションが変わりつつあることの象徴であるように感じるのです。
一方で、「ボディポジティブ」への理解もここ数年でより確かなものになりました。痩せた体型の人だけが美しいとする従来の価値基準ではなく、ありのまま容姿の多様性を受け入れようとする考えを表す言葉ですが、このボディポジティブの潮流が表すように「どんな自分でありたいか?」を重視する人は増え、その上で服選びをすることも一般的になりつつあります。
同時に「男らしい/女らしい」という性差についても時間をかけて溶けていき、そのどちらでもないユーザーの「自分らしい」服選びに寄り添うアパレルが次々に誕生しています。多様化した価値観に応えるようにファッションは多様化していて、もう、服は自分の好きなものを選べるようになった、好きな服を自分のために身に着けたらよいのではと思うのです。
オーストラリアのアンダーウェアブランドHARAは2016年11月に正式スタート。ファッション業界が地球環境に与える影響をインドで目の当たりにしたという創業者が「デザインと持続可能性の融合」を理念に掲げて立ち上げた。
もんぺの登場
わざわざセレクトもんぺ(左:すいか/右:にわか雨)
自らの服選びを考え、日用品の店としてお客さまに伝えていく上で、もんぺとの出会いはわざわざにとって大きな出来事でした。
現代にマッチする型にアレンジした、うなぎの寝床の“現代風”もんぺ。実は、出会った当初うなぎの寝床が販売していたのは、所謂ふつうのタボッとした農作業用シルエットのもんぺでした。うなぎの寝床代表・白水さんが穿いていた細身シルエットのお手製もんぺを見てどうしても欲しくなったわざわざ平田が、「それが欲しい!」とお願いしたことが一つの要因となって、生産が始まり卸をしてもらうようになったのが、取り扱い始めた経緯です。
お尻や腰回りは動きやすさを重視して、旧来のもんぺと同じくゆったりめ。ふくらはぎや足首周りはシェイプされたシルエットで、活動しやすいのにも関わらず、シルエットがスリムという形が”現代風”という所以です。
伝統があり、着心地がよく、さらに生地が頑丈で経年変化が楽しめる。それでいて、色柄を選んで思いどおりの印象を作ることもできる。あれ?これって、自分の好きなように選べて、自分のために身に着けられる服ってことなんじゃないかな?
もんぺとの衝撃的な出会いから、わざわざでは今の時代にちょうどいい服・自分らしくあれる服の選択肢として「もんぺ、良いものだよ」「もんぺ、大いにアリじゃない?」と長年訴え続けてきたのでした。だって本当に快適で、履いていて気持ち良いんです。
さらにリラックス。 ストレッチもんぺ
もんぺを売り続けているうちにうなぎの寝床とのコラボが決まり、生地から製作したコラボもんぺをわざわざで開発するに至ります。続いて、ストレッチ素材はないの?という多くのご要望に応えるべく「わざわざのストレッチもんぺ」をリリースしました。
うなぎの寝床×わざわざ|コラボもんぺ【レディース】【メンズ】
わざわざ|ストレッチもんぺ わざわざオリジナル【ユニセックス】
ふくらはぎや足首周りを絞ったシルエットを保ちつつ、こちらもポリウレタンを2%加えたストレッチ生地を別注で制作。生地がやわらかく横に伸び、ふくらはぎや膝の曲げ伸ばしがさらに楽になったことで、元々着心地のよいもんぺがさらに快適になりました。
家でも外でも、普段着としても仕事着としても、いつも心身ともにリラックスできるもんぺに仕上げることができたと思える自信作です。
ストレッチもんぺとコラボもんぺを穿き比べ(どちらもチノ/Sサイズ。モデル身長159cm)。生地の特性上、ストレッチの方がゆったりとしたシルエットになります。
最初は少しゆったりめに見えるストレッチもんぺですが、洗濯をすると縮みます。伸縮性があるため「窮屈になる」というより「体のラインにフィットする」感じへと変化していきます。大きめのシルエットがお好みの場合は、ジャストサイズより1サイズ大きいものがおすすめです。
全員同じコーディネートで撮ってみました。フキダシ内は上から、身長・パン屋のTシャツ着用サイズ・ストレッチもんぺ着用サイズ。ご参考に。
わざわざ|パン屋のTシャツ 長袖 シャツ ロンT ユニセックス
かつてジーンズが誕生した時代から変わり、何かに縛られることなく、私たちは自分の好きなように柔軟な服選びができるようになりました。現代の服もまた永遠ではないのかもしれませんが、それでも自分たちで作ったストレッチもんぺは、今の自分たちがちょうどいいと思えるものです。
どんな人・どんな体型の人にも好きなように着られる柔らかいもんぺが、長く愛されるものになることを願っています。私たちがもんぺと出会ったように、読んでくださったみなさんにも「もんぺ、アリかも?」と選択肢に加えていただけたなら、うれしいです。
文責>鈴木誠史 写真>若菜紘之 編集>平田はる香
(※)参考:
・ALL YOURS|『久しぶりに穿いてみたくなるジーンズ』
・HARA|Soft Bamboo Bras & Underwear - Hara The Label
ストア紹介
パンと日用品の店 わざわざ
パンと日用品の店〈わざわざ〉は長野県東御市御牧原の山の上にポツンと佇む小さなお店。“よき生活者になる”を合言葉に、薪窯で焼いたパンと、食と生活それぞれの面から、独自の選定基準を定めて自分たちが心からよいと...もっと見る