「いのち」と響き合う「住まい」へ。
土、光、風、生き物たち、歴史、記憶…
その土地に「あるもの」が活きる設計は、いかにして可能か。
近代の「建築」を未来に向け更新する、対話の記録です。
――はじめにより――
この数年、利他について考えてきました。
その中で痛感したのは、自分以外の存在を自分の思うとおりにコントロールしようとしているときには、利他は起動しないということでした。
(中略)
堀部安嗣さんという建築家は、「沿う」ことの達人です。
建築家は、自己のオリジナリティを打ち出す傾向が強いように思いますが、堀部さんはそのような「自力」を極力抑制しようとしているように見えます。
――――――
堀部さんが掲げていらっしゃる「パッシブデザイン」は、その土地の形状や光、風、土壌、土地の歴史、そこに暮らす生き物や空気の流れなど、今ここに「あるもの」を活かして、あるべき建築の形を整えていくという考え方です。
心から安らげる住まいって、どんな場所だろう。
利他の本質は、「料理」や「建築」など、日々の暮らしの中にこそあるのでは?
読みながら、お二人の対話に参加している気分になれる一冊です。
1967年、神奈川県横浜市生まれ。建築家、放送大学教授。筑波大学芸術専門学群環境デザインコース卒業。益子アトリエにて益子義弘に師事したのち、1994年、堀部安嗣建築設計事務所を設立。2002年、〈牛久のギャラリー〉で吉岡賞を受賞。2016年、〈竹林寺納骨堂〉で日本建築学会賞(作品)を受賞。2020年、〈立ち去りがたい建築〉で毎日デザイン賞を受賞。主な著書に『建築を気持ちで考える』『住まいの基本を考える』などがある。
1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。北海道大学大学院准教授を経て、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年、『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『保守のヒント』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『下中彌三郎』『保守と立憲』『親鸞と日本主義』『保守と大東亜戦争』、共著に『現代の超克』などがある。
第1章 土木に宿る救済思想
第2章 パッシブデザインと利他
第3章 住まいの重心を下げる
第4章 建築という「道」
第5章 未来のために建築ができること
――本文より――
堀部:
アーキテクチャーを正確に訳せば、「何とか道」ではないか、という話なんです。茶道、華道、柔道、武士道のような。そうなると建築の見え方が変わってくると思うんですね。
中島:
人間の「自力」を自然に押しつける産物になっていってしまっているのが、現在の建築かもしれません。おそらく堀部さんは、その真逆の方向を向いて建築を進めていこうとされる。
本書の話題は建築を中心に進みますが、領域を超えた普遍的な話につながっていくのも面白い。
読んだ後は、周りの方と感想を語り合いたくなるはずです。
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